欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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このような環境で、ヒポ・グループ・アレナの建設が実現したのは、UEFA EURO 2008 TM (以下、ユーロ2008)という、FIFAワールドカップTMにも匹敵する巨大イベントの開催地に選ばれたため。すなわちイベントのために、公費で巨大施設を建設した事例である。 ユーロ2008(6月7日~29日)終了後、観客席を32,000人収容から12,000人収容へと、半分以下に縮小する。これにより、年間の維持費用が3分の1程度まで縮減できる。また天然芝ピッチを人工芝に張り替えることで、ピッチを使ったイベントの稼働率を高める予定だ。建設費107.3億円の中には、これらユーロ2008後の改修費用11.3億円が含まれている。 図 1:ヒポ・グループ・アレナ 4 100%クラブ負担で改修、管理される、フィリップス・シュタディオン ヒポ・グループ・アレナと対照的に、フィリップス・シュタディオンは、土地も建物も、100%クラブの所有物だ。ここ20年間に274億円をかけて改修を重ねているが、その費用もクラブが負担している。 フィリップス・シュタディオンとその土地は1980年代まで、世界的な総合エレクトロニクス・メーカー、フィリップス社の所有物だった。同社傘下で発展を重ねていたプロサッカークラブ、PSVアイントホーフェンが同社から独立した際、スタジアムと土地もクラブが所有することになった。 PSVアイントホーフェンは、オランダを代表する有力クラブで、欧州の強豪クラブしか参加できないUEFAチャンピオンズリーグの常連でもある。チャンピオンズリーグへの出場はクラブに数10億円単位の収益をもたらす。そのお陰もあってクラブは、スタジアムと土地という固定資産を所有しながら、黒字基調の経営を実現している。 図 2:フィリップス・シュタディオン 5 公民共同によるスタジアム建設 残り4つの事例、MSVアレナ、リーボック・スタジアム、アムステルダム・アレナおよびリコー・アリーナでは、公民共同でスタジアムが建設されている。この4施設の建設費における公的補助金の割合は16~30%程度2にとどまる。補助の主体は市だが、州、国、EUなどの補助制度も最大限活用されている。 ここでスタジアム建設における公共の役割は、上記の数字以上に大きいことを、三つの点から指摘しておきたい。 第一に、市や州が直接投資と別に、民間の資金調達を支援している事例がある。MSVアレナ建設ではクラブが銀行から48.4億円(30百万ユーロ)を借り入れているが、実にその80%を州が債務保証している。リコー・アリーナでも、市が49.9億円 欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査Ver. 9 p. 5 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 2 12~71億円

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