CASE 2; Reebok Stadium, (Bolton, England), ver.5 p.9 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved サッカークラブの経営 11 クラブ経営 Duckworth氏はクラブ経営について、次のように語った。 「ファンはもっと選手に投資しろと言うが、ボルトンのファンベースは大きくないので、難しい。逆に今期はアネルカ選手を15百万ポンド(31.1億円)で、チェルシーに売却した。」 「クラブの第一優先事項は、存続することにある。」 「クラブが将来発展する可能性は二つ。一つは競技面で成功して、収入が増えること。チーム成績が上がれば入場料収入、スポンサー収入、テレビ放送収入を増やすことができる。」 残念ながら、リーボック・スタジアムの収容人数はプレミアシップ最少レベル13で、チームは今シーズン、最後まで降格争いを演じた。14「もう一つはホテルの客室を増やして、売上を増やすこと」 クラブの日常的な意志決定は、チェアマンのGartside氏が行う。 オーナーのDavies氏、チェアマンのGartside氏、CEのDuckworth氏の3名が、月1回程度、ミーティングを持つようにしている。Duckworth氏は「他のクラブに比べれば、意志決定経路は短い」と言う。 役員会は、提案された事案の可否を決する、受け身的なあり方。新規の選手獲得、大きなプロジェクト等が、検討される。 CEのDuckworth氏の下に、3人のディレクターがいて、それぞれ財務、事業、施設部門を所轄する。また2人のマネージャ 13 “Football Grounds Then and Now, Fourth Edition”, Ian Allan Publishing, P.23 14 結果はプレミアシップ20チーム中16位で、残留。降格クラブとの勝ち点差は1 ーがそれぞれ人事とIT(チケットをカード化して、入場ゲートで読み取るシステム等)を担当する。 管理部門に150人程度の社員がおり、選手は約50人。試合日には700人体制をとる。15 12 クラブのオーナーシップ クラブは資金集めのため1997年、ロンドンの株式市場に上場した。当時英国では多くのサッカークラブが上場したが、思うように資金調達できずに、その後撤退した例が多い。Duckworth氏によれば、「サッカークラブの株式はあまりにもボラティリティが高く、リスクも大き過ぎた」。 ボルトンも2003年、上場をやめて「伝統的な方法、つまり一人の資産家に頼る方法に戻った」。 資金不足に陥ったクラブの増資要請を、STRIX社16の経営者で資産家のDavies氏が、引き受けた。氏は数年間で、バーンデン・レジャー社株式の95%を取得し、同社は非上場に戻った。残り5%は6,000人の株主が所有している。 Duckworth氏は「一時の上場ブームの結果、多くのクラブが外国人オーナーを戴くことになった。リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、アストンビラ、ダービー・カウンティ等は、アメリカ人に買われた。チェルシー等のオーナーは、ロシア人だ。 これら投資家は、リスクを取ってクラブを買っており、多くは長期的な利益を志向している。 非上場企業は外部からは奇妙に見えることもあるだろうが、今はこの形態を選ぶクラブが多い」。 15 巻末に詳細資料を掲載した 16 英国チェスター市にある魔法瓶メーカー。Davies氏は現在、顧問
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