欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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積極的にビジネス・パーソンを採用して、新しいビジネスモデルに取り組んだ。このとき採用された一人が、Duckworth氏だった。同氏は公認会計士で、元アンブロ・ヨーロッパのファイナンス・ディレクター。「私はサッカーファンだけど、クラブにいるのは、ビジネスのため」と彼はいう。 図 6:中央Duckworth氏、奥Kozlowski氏 CASE 2; Reebok Stadium, (Bolton, England), ver.5 p.7 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 彼らの目標は、サッカーだけに依存しないで、スタジアムを維持すること。スタジアムだけを建設した時点で、クラブは35百万ポンド(72.5億円)を投資し、大きな運営負荷を負った。スタジアムを安定運営し、銀行を説得するためにも、新しいビジネスが必要だった。 新事業計画は、クラブを中心に、アンダーセン等の外部専門家に相談しながら進められた。クラブ所有スタジアムで、利用方法や改修工事に関する制約が小さいのは、有利な点だった。 このとき建設関係の助言をしていたKozlowski氏はいま、クラブの施設ディレクターになっている。 彼らが目を付けたのは、スタジアムに多くの部屋があることだった。それらは試合のない日に、バンケット等で活用できるし、大きな会議ができる広い部屋もある。 図 7:ピッチを望む広い部屋 「ここに客室とレストランを付け加えれば、全体としてホテルになる、と考えた」。 ホテル運営のノウハウは、専門業者と合弁することで、導入した。パートナーは、ディベア・グループで、同社はスポーツ、レジャー分野への進出を目論んでいた。クラブとディベアは折半出資で、BWホテル社を設置した。 図 8:ホテルロビー またクラブはディベアと共同で、銀行に事業計画を提示し、ホテル建設のための10百万ポンド(20.7億円)の融資を引き出した。 9 毎日稼働するスタジアムへ 2000年、チームカラーの白にちなんで“De Vere Whites”と名付けられたホテルが開業した。125ある客室のうち19室から、直接試合を見られる。レストランからも観戦可能で、試合当日は食事+観戦+宿泊のパッケージで販売される。 図 9:ピッチが見えるレストラン ホテルの正面入口と客室は、スタジアムの北スタンド(ゴール裏)下に設置された。これが西スタンド(メイン)、東スタンド(バック)と接続し、VIP用諸室が、ホテルのバ

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