欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査Ver. 9 p. 1 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved はじめに Jリーグクラブが本拠地とするホームスタジアムは、ほとんどが公共施設で、施設運営において毎年少なからぬ公的補助金を必要としている。また施設にとって主要な使用者であるJリーグクラブは、設備や備品の質、運用の自由度、交通アクセスの等の面で、不満を感じていることが多い。 これに対し海外には、スポーツ施設の機能を複合化し、スポーツイベント以外の稼働率を高め、利益を上げる例がある。このような施設は稼働率に見合った、交通至便な立地に設置され、スポーツ観戦時の快適性も大いに向上している。一つのスタジアムの水準が向上すると、ライバル関係にあるスポーツクラブのスタジアムも対抗して水準を高める。このような連鎖の結果、とくに欧米では近年、新しいスポーツ施設の建設および改修が盛んで、かつその質が急速に高まりつつある。 日本ではプロスポーツのイベントを開催する施設について、「施設運営による収益は期待できないものの、社会的に一定の意義はある。従って公共事業として整備するが、できるだけ投資額を抑えて、必要最低限の機能を設備すればいい」と見なすのが一般的だろう。この考え方を、「スポーツ施設は工夫すれば、スポーツイベント以外でも収益を上げられる。収益を上げるための事業プランがあれば、民間投資を期待できる。好立地で高機能な施設を実現することで、初期の建設費用が高くついても、毎年の管理事業の利益から十分に回収できる」と転換することが望まれる。欧米などスポーツ先進国はすでに後者の考えに立って、スポーツ施設への投資を加速している。日本も同じ考えに立たないと、競技力向上およびスポーツ文化振興の両面において、ますます後れを取ることになりかねない。 Jリーグは国内外のすぐれたスポーツ施設について、事業構造に注目しながら紹介することで、我が国のスポーツ施設整備に対して、一定の貢献を果たしたいと考えている。そのため早稲田大学スポーツビジネス研究所(RISB)と共に事例調査に取り組み、最初の成果として2007年9月、『ソウルワールドカップ競技場 調査報告書』を発表した。本書は、これに続く第二回の報告となる。 本書は欧州のわずか4カ国6施設の事例報告にとどまるので、日本のスポーツ施設への適用を企図する際には、日本の法令および社会背景に見合ったアレンジが必要となるだろう。また各施設の所有者、管理者、および使用者を、バランスよく調査できているとは言い難い。 このような課題を残す本書であるが、行政、企業、Jリーグクラブなど、関係者の皆さまにひろく、将来の施設整備を企画する際の参考していただければ幸いである。 2008年7月 社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

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