CASE 1; MSV-Arena, (Duisburg, Germany); ver.7 p.5 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved ・ 市の補助金 7.5百万ユーロ(12.1億円) ・ 銀行借入 30百万ユーロ(48.4億円) 資金調達の第一の柱は、プロジェクト社への出資で、全体の16%を占める。筆頭株主には2.5百万ユーロ(33.3%、4億円)を出資した2社が並ぶ。その1社であるGEBAGは不動産会社で、以前は市の組織だったという。最小の株主は10万ユーロ(1.3%、1.6千万円)。また地元の信用金庫が、1百万ユーロ(13.3%、1.6億円)出資している。 株主は全部で10社だが、州、市、クラブは、出資していない。クラブは資本でなく、ドイツのゲゼルシャフト法の定めにより、プロジェクト社を所有しているという。ブレーマー氏に詳しい説明を求めたが、「それだけで半日かかるほど複雑」とのことで、あきらめざるを得なかった。 資金調達の第2の柱は、デュイスブルク市による補助金拠出で、民間出資と同額の7.5百万ユーロ(12.1億円)にのぼる。 第3の柱は、銀行(HSH Nordbank)からの借り入れ30百万ユーロ(48.4億円)で、全体の68%を占める。返済期間は25年。 借入を実現するために、40~50の審査項目を満足する必要があったという。ビジネスラウンジの販売状況、マーケティングデータまで提示しながら、融資を得た。 このような巨額の借り入れが可能になった背景には、州による債務保証制度がある。借入金額の実に80%を、ノルトライン・ウェストファーレン州が保証している。州の制度を利用するにあたり、経営プロジェクトが適切かどうか、会計会社(PwC:プライスウォーターハウスクーパース)による査定を受けた。また州に対して、建設費用が予算内に収まることを、約束しなくてはならなかった。 保証料は、年10万ユーロ(1.6千万円)程度で、毎年少しずつ安くなっていく。 ドイツはFIFAワールドカップ2006TMをホストしたので、その準備としてスタジアム投資が活性化した。デュイスブルク市が所属するノルトライン・ウェストファーレン州は、ことにサッカーの盛んな地域で、多くのスタジアムが改修された。 そのうちジグナル・イドゥナ・パーク(ドルトムント)9と、ベルティンス・アレナ(ゲルゼンキルヘン)は、MSVアレナと同様に、州による保証制度を利用している。ライン・エネルギエ・シュタディオン(ケルン)10とLTUアレナ(デュッセルドルフ)11は、この制度を利用できなかった。とくに後者は、計画内容が評価されなかったという。 5 市有地の提供と、施設使用権 クラブは市と、市有地を99年間占有使用する契約を結んでいる。クラブは借地料として市に、年9万ユーロ(1.4千万円)を支払う。他方、市はクラブに、MSVアレナの使用料として、同額を支払う。ブレーマー氏によれば、「結果として、土地は無償供与してもらっている」。 この枠組みにおける市の施設使用は年5回。ビジネスラウンジの使用についても取り決めている。市によるスタジアム使用例は、次の通り。 ・ ワールドゲームズ(2005年) ・ ボートの世界選手権時、スタジアム外郭でイベント開催(2006年) ・ デュイスブルク・マラソン大会(毎年) ・ その他 9 旧称ウェストファーレン・シュタディオン。ホームクラブはボルシア・ドルトムント 10 ホームクラブは1FCケルン 11ホームクラブのフォルトゥナ・デュッセルドルフ。レギオナルリーガ(3部相当)だが、スタジアムは、5.1万人収容
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