欧州におけるサッカースタジアムの事業構造調査2008報告書
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CASE 1; MSV-Arena, (Duisburg, Germany); ver.7 p.4 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved スタジアムの建設 2 新スタジアム建設 スタジアムの新設を望んだのはクラブ。リーグが定めるスタジアム基準が厳しくなり、旧スタジアムの改修では、対応することが難しくなっていた。また新スタジアム効果によるクラブ収入増も期待された。 市が所有していた陸上トラック付きの旧スタジアムを取り壊し、新たにトラックのない球技場タイプのスタジアムが、建設された。 図 3:旧スタジアム(アレナ公式HPより) 図 4:MSVアレナ(クラブ製のプレートより) 3 クラブがスタジアム新設を提案 2002年、クラブの財政が悪化した際、地元の大手建設会社、ヘルミッヒ社が、支援に乗り出し、クラブ経営に参画した。 まず同社社長のWalter Hellmich氏5が、クラブとプロチーム運営会社の理事長に就 5 インタビューイMark Hellmich氏の父 任した。そしてヘルミッヒ社がクラブのメインスポンサーになり、あわせてプロチーム運営会社の株式12%6を取得した。 ヘルミッヒ社は、当時最新鋭とされたベルティンス・アレナ(ゲルゼンキルヘン)7の建設に参加した実績を活かして、この分野のビジネスを拡大したいと考えていた。ドイツは4年後にFIFAワールドカップ2006TMの開催を控えており、需要増も期待できた。 ヘルミッヒ社との関係を深めつつあったクラブは、デュイスブルク市にスタジアム新設を提案した。その内容は次の通り。 ・ 建設資金の多くをクラブが負担する ・ 運営責任もクラブが負う ・ 市が旧スタジアムの管理費として毎年拠出していた1百万ユーロ(1.6億円)は今後不要になる クラブの専務理事ブレーマー氏によれば「この提案が市に歓迎され、7.5百万ユーロ(12.1億円)の補助金の根拠になった」。 2001年、新スタジアム建設のコンペがあり4社が応札したが、その中で唯一スタジアム建設の経験を持っていたヘルミッヒ社が、落札した。 4 建設資金と、その調達 建設コストは45百万ユーロ(72.6億円)8。ヘルミッヒ社との強い関係のお陰で、相場より安価に抑えられた。また市の土地を借用したので、用地取得費用は不要だった。 クラブはその傘下に、スタジアムを建設し、所有する主体として、プロジェクト社(MSV Duisburg Stadionprojekt GmbH & Co.KG)を設立し、同社を通じて建設資金を調達した。その内訳は次の通り。 ・ 同社への出資 7.5百万ユーロ(12.1億円) 6 残り88%はクラブ所有 7 旧称アレナ・アウフシャルケ。ホームクラブはシャルケ04 8大型スクリーン2基(画面は41㎡、両ゴール裏)のリース費用を含む

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