Arup Sport; ver.3 p.9 Copyright ©Japan Professional Football League / Research Institute for Sport Business, Waseda UNIV 2008, All Rights Reserved 外部とのパートナーシップと外国での展開 アラップスポーツが担当するプロジェクトでは、案件に応じて、他社や外部のスペシャリストとパートナーシップを組む18。例えば北京国家体育場やアリアンツ・アレナでは、世界的な建築家であるHerzog氏やDeMeuron氏とパートナーシップを組んだ。 また、各プロジェクトにおいて、必ず現地のデザイナーや現地企業などとチームを組むのを原則にしている。Parrish氏によると、その理由は「現地のことを一番良くわかっているのは現地の人だから」とのこと。 実際に、例えば広島市新球場プロジェクトでは、松田平田設計(東京都港区)、エヌ・ジー・オー・アーキテクチャー有限会社(名古屋市)とパートナーシップを結び応募している19。 芝生育成について Parrish氏は、スタジアムの建築デザインを検討するに当たって、芝生育成のための配慮が欠かせないことを語ってくれた。日々のメンテナンスに支障を来たすことがないよう、日差しと風を十分に取り入れることができるデザインを考案し、最新技術の導入を検討しているとのこと。 例えばウクライナ・ドネツクのスタジアムでは屋根に傾斜を入れたことで、太陽光が十分にピッチに届くようにしており、アリアンツ・アレナではETFEの太陽透過率の高さを利用して、芝生の育成を行なっている。 一方で、人工芝の普及が進んでいることも認識している。「FIFAも認めていることから、いくつかのスタジアムで導入が進められている。ただし、FIFAは国際大会を開く際は全ての会場で同じ条件(芝生なら芝生、人工芝なら人工芝)とすることを求めている。デザイナーの立場としては、FIFAにははっきりとした方向性を示して欲しい。」という考えを明かしてくれた。 メディアのパワー スポーツ界においてメディアの存在はとても高まってきていると感じているとのこと。メディアは世界の観衆を魅了する、強力なパワーを持つ存在であることを認識し、メディアにとって使い勝手のよいデザイン(テレビカメラの配置、動線確保など)とすることを心がけている。 アラップスポーツの最新プロジェクト Parrish氏がもっとも力を入れているのは、シンガポールのプロジェクトである。政府とのPPP20によって進められているもので、アラップスポーツは「建築デザイン」と「運営方法」・「機能」のプランニングを任されている。「35年間のデザイナー人生で初めての体験だ」と語るほど、Parrish氏にとっても今回のプロジェクトは非常にチャレンジングであるようだ。 18 欧米では分業が一般的とのこと。日本ではゼネコンが設計から建設まで一貫して実施するケースが多いが、欧米では複数の企業がそれぞれの役割を果たす。 19 プロ野球広島東洋カープの本拠地である広島市民球場の移築計画。アラップ社らによる計画は募集要項とそぐわなかったため、最終的には応募を辞退した。 20 Public Private Partnershipの略。日本語では公民連携事業。
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