Ⅲ-4.プレミアリーグ Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) 間接的なメリットとしては、こういった活動を行うことで政府がプレミアリーグを好意的に評価してくれ、海外への放映権の販売などに際して、リーグ主導で行いやすくなるといったことがある。現在ではプレミアリーグ本部と同じビル内に本部があり、16名のスタッフが働いている。 将来有望な人材を地域から発掘していくという点でも、このファウンデーションからの資金による地域レベルの活動が今後重要になると思われる。 7.所感 巨額な放映権収入がスタジアム施設、練習場やその他の施設の充実のベースにあり、それらを活用してコミュニティ活動やアカデミー活動も非常に効果的に行われている模様であるが、前提はそれら施設の敷地が十分に確保できていることにあると思われる。リーグ運営の仕組み、アカデミーの内容、スタッフィングなどの状況はさほどPLとJリーグの間に大差があるとは思えず、PLとてまだ本格的に現在の体制をとり始めてからは10年足らず。アカデミーからワールドクラスの選手が続々と生まれているかどうかも含め、大きな違いの1つはこの施設の敷地の状況にあるのではないか。 これはスペインの各クラブでも同様であったが、スタジアム建設・改装や練習場の増築に関し、まず土地の手当てが付いているから主に上物だけへの資金調達、投資、回収計画があれば物事が進んでいる模様。100年近い歴史を背景にクラブが土地を所有していたり(一部売却もしたり)、近年の巨額資本の導入があったりすることがこれらを可能にしているものと思われる。 スタジアムを所有することや、アカデミーの練習場の面数の要件など、日本ではたとえ巨額な放映権収入があったとしてもかなり無理な話と思われ(土地の取得から始めると英国並みの資金が投入されても整備できる施設はわずかにとどまる)、やはり、行政や第三セクターのような機構から遊休の土地を廉価に借り受けるしかないのでは。それにはコミュニティ活動などによりPR効果を最大限にあげ、自治体や地域の人たちによく言われる「サッカーだけを応援するわけにはいかない」という考え方を「サッカーを支援しておけば地域全体にメリットがある」という方向に少しずつでも変えてもらう必要があるのでは。そのためにはフットボールファウンデーションを参考に、各団体が拠出できるお金をtotoの分配金も含めて1ヵ所に集め、効果的に目に見える形で各地域に還元していくことを検討するべきではないか。おそらくPLによるコミュニティ活動は同程度の金額をマス広告に費やすのに比較してはるかにPLの認知度、ブランドイメージの向上に効果を発揮していると思われ、拠出できる額には違いがあるものの、参考にすべき仕組みや活動内容は多々あるように思われた。 アカデミー部門 スティーブン・ハイアム氏 (元エバートンのアカデミー担当者) 8.ユース世代の育成 (1)ユース育成に注力する理由 その国のサッカー界の将来がユース世代にかかっている。その育成が何よりも大切。ユース育成にも多額の支出がなされているが、無制限に使えるお金ではないので、分配されたお金を有効に活用していくことが重要。地元出身の選手はサポーターが愛着の湧く存在となるので、その育成がとても重要。 クラブがヨーロッパ(UEFA)の大会に参加するためにはアカデミー組織を運営していることが必須。現時点で英国の各アカデミーは、UEFAの基準でゴールドという高い評価を受けている。 46
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