イレブンミリオンプロジェクト欧州視察2008報告書
33/73

Ⅲ-2.ウェストハム・ユナイテッドFC Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) 3.ファンクラブについて (1)ファンクラブの考え方 この「ファンクラブ」というような組織はスペインのチームにはないそうだが、イングランドでは日本と同様に存在し、「シーズンシート」とは別の収入源として、計画的な運営がなされているようだ。 つまり、ウエストハムにおいても現在の収容数と人気から考えても、約35,000席はシーズンシートで完売しようと思えばできる。しかし、6,000席ほどの一般販売枚数を各試合残すことで、チケットを優先購入したいと考えるサポーターが年会費7,000円のファンクラブ会員に入会してくれる。現在33,000人会員がいるが、これをもっと拡大していき、収益増につなげる考えである。 (2)ファンクラブの特典 会員は一般発売より優先的にホームゲームのチケットを購入する権利がある。チケットの販売はファンクラブは試合の6週間前、一般は4週間前。購入できる枚数は一人1試合1枚のみ。アーセナル、リバプールなどとのビッグゲームになるとファンクラブで完売になるため、一般販売までチケットは回ってこないらしい(そのためにもファンクラブに入会する人が増えている)。 33,000人の会員が残り6,000席を電話で申し込んでチケットを取る。これだけ見ると、クラブメンバーに入会してもほとんど試合を見に行けない気がするが、それでも入会者が増えるのにはクラブの工夫がある。 (a) オンラインムービーの視聴権。入会から3ヶ月は無料。その後は有料となるが、通常のテレビでは見ることのできない試合のハイライト映像や監督・選手のインタビューなど、ファンなら誰もが見たくなる充実した内容になっている。 (b) ジュニアメンバー(U-16)には、アウェイゲームでのエスコートキッズに参加できる権利の他、バースデーカードがクラブから送られてくる。また、選手が参加するクリスマスパーティへの無料参加チケットも付いてくる。 そして、シーズン中に1試合観戦無料、年間 3試合は「1ポンド(=220円)で観戦」できる権 利がある。 ※イングランドには12歳以下の子供は単独で外出してはいけないという法律があるそうで、ジュニアメンバーが観戦権を得た場合、もれなく最低大人1人分のチケット収入が見込める。 低年齢層を会員にすること、そして観戦したいと思わせることで、大人が会場に足を運んでくれる(収益をもたらしてくれる)という流れができている。 (c) その他の特典は、スカーフやピンバッジが入 った記念ボックスが貰え、オフィシャルショップ での10%の割引が受けられる。 (3)雑感 特典内容については、特に日本のチームとさほど差はないように感じた。むしろ、日本では2,000円~5,000円程度しか頂いていない年会費に対して、サービス過多といえるほどの特典を提供し、結果的にファンクラブの事業が収益を生んでいないといったケースが多々見受けられる。ウエストハムの場合、収容人員に対するシーズンシートの割合がファンクラブ事業を進めるにあたって理想的な形(75%がシーズンシート)になっているように感じる。 4.試合告知やプロモーションについて ロンドン市内には多数のチームがひしめきあっているため、告知についても工夫がなされているか質問した。 (1)プロモーションエリア 基本的には、試合に関する告知(試合日、チケット販売日など)は、ホームタウンを中心としたローカルエリアと東部のエセックス地区へのローカル新聞など。一方、ファンクラブについてはロンドン全体に対して広告などで告知を行うとのこと。また、過去にファンクラブに入会していた方には、データ管理を行っているため、定期的に様々な案内を送っているという。 32

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る