Ⅰ.はじめに Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) Ⅰ.はじめに 2007年9月に実施された実行委員会欧州視察を受け、2008年1月、各クラブの第一線でファンと向き合っているイレブンミリオンの担当者と、スペイン・イングランド・オランダの3カ国7クラブを訪問、3試合を観戦した。 スペインでは、世界でも指折りのセビージャダービーを観戦して「熱狂の原点」に触れた。人口17万人のホームタウンに2万人弱のスタジアムを保有し「身の丈経営」を育むオサスナの哲学、ユニホームにスポンサーを入れず、バスク出身選手でチームを構成するアスレティック・ビルバオの理念を聞いた。 ロンドンではプレミアリーグのアーセナルとウェストハム、2部のチャールトン・アスレティックの3クラブを分散訪問。マーケティングやアカデミー、地域でのコミュニティ活動をヒアリングした。 そしてオランダでは、12年前に世界初のキャッシュレス売店を取り入れたアムステルダム・アレナで、システム化された観戦環境を実体験した。 参加メンバーからの質問は絶えず、ミーティングは2時間を越えたが、訪問したクラブは、いずれも真摯に受け入れてくれた。視察やヒアリングで得た詳細は、次葉からの訪問先別のレポートに記されているが、 「サポーターやシーズンシート保有者が、本当に自分のクラブだと感じているかがとても大事。」 「深く地域社会に根付いているから観客が減らない。」 「1試合1試合が戦い。サポーターがいてこそ勝てる。」 「地域社会への関わりは、商業的活動としては捉えていない。クラブとして当然の活動。」等、いくつものキーワードを聞くことができた。 肌で感じた世界は、イレブンミリオンに取り組んでいる我々にとって、とても参考になるものだった。チケットは常に完売。シーズンシート保有者がスタンドの大部分を占め、カードやバーコードシステムで来場者を把握。自前のスタジアムを核として地域社会へのコミュニティ活動、アカデミー活動を展開。真の「シンボル」として、地域になくてはならない存在となったクラブの姿である。 無論、すべてが「理想」ではない。収入源の大半を占める莫大な放映権料、それにより直前まで決らない日程や試合開始時間。高騰するチケット価格。外国資本の参入による巨大化など、欧州ならではの問題があり、しっかりとオーガナイズされた運営や、安全で誰もが楽しめる観戦環境など、日本の方が優れており、欧州を反面教師にしなければならない面もある。 今回参加されたメンバーの3分の2は、欧州のクラブサッカーを初めて見る方だった。Jクラブの現場で、日々の業務で多忙なみなさんが、唯一休める年始を返上して、このハードな「強化合宿」にご参加いただいたことに心から感謝したい。これ以上ない刺激を受け、今後、クラブに戻ってからの活動のひとつひとつに、「歩む道の先」の姿としてイメージし、大いに活かしていただいてこそ、実りある視察だったといえよう。 Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 佐藤仁司 【期間】 2008年1月4日(金)~1月16日(水) 11泊13日 (行程の詳細は巻末に記す) 【訪問地】 スペイン(セビージャ、パンプローナ、ビルバオ) イングランド(ロンドン) オランダ(アムステルダム) 【参加者】 39名 Jクラブ30名、J事務局5名、J関連会社3名、その他1名 【目的】1.クラブのイレブンミリオン担当が、欧州のサッカー文化に触れ、今後の活動に活かす。 ①なぜ、人々がスタジアムに足を運ぶのか、「熱狂のスタジアム」の雰囲気に触れ、本質を知る。 ②常にチケットが完売している状況下でも、チケット営業、シーズンチケット更新にむけて努力している活動をヒアリングする。 ③地域の小クラブやビッグクラブの近くで地道に活動する小クラブにも訪問し、アイデンティティーを聞く。 ④高度なスタジアム施設、快適なファシリティを視察。 ⑤顧客管理、リピーターに向けた施策を探る。 ⑥町を歩き、クラブと市民とのタッチポイント(ショップやグッズ、告知ツール)を目にする。 2.クラブのイレブンミリオン担当間のコミュニケーション活性化の場とする。 ①普段、交流のないクラブ間のコミュニケーション ②クラブ規模、クラブ事情に応じたグループ編成によるコミュニケーション 2
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