Ⅲ-1.アーセナル Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) 6.チケッティングの概要、入場管理について アーセナルほどの“ビッグクラブ”になると、基本的にはお客様がセルフサービス的にオンラインでチケットが販売、更新される方法を採用している。 各種メンバーシップカードは、ICチップが埋め込まれたカードとなっており、これがチケットの代わりとなり、入場管理:顧客管理を行っている(基本的に紙ベースのチケットが必要ないので、コスト削減となる)。スタジアムでは、入場ゲートにて電子制御による本人認証が行われ、偽造チケットによる不正入場は100%排除できている。 また、シーズンシート保持者で試合当日スタジアムに行けない人が1試合平均で3,500人いるが、イギリスの法律ではクラブの承認なしにチケットを譲る(転売する)ことは禁止されている。そこでクラブオフィシャルHPの専用ページを介して合法的に代わりの人に販売することができる「チケットエクスチェンジ」という方法をオンラインで導入しており、その場合クラブはチケット額面の10%を手数料として得て、90%はお客様に戻る。従ってスタジアムが常に満員となる(チケットの未着を防ぐこと、かつ試合を見たいお客様の要求を満たす)ための1つの方策であると言える。 このほかにも、販売枚数の少ないアウェイゲームのチケットがメンバーに対して優先的にウェブで販売されるなど大手旅行会社であるトーマスクック社と統合されたシステムを持っている。 このように、アーセナルは、最先端のチケッティングシステムを保有するだけでなく、20万人を超える会員(メンバーシップ)ならびにトラベルサイトやチケットエクスチェンジなどの提携販売システムにより450万人の個人にアクセスできる顧客データベースを保有している。 7.まとめと所感 アーセナルにおいては、スタジアムは常に満員であり、チケットが買えないという飢餓感がお客様にある完全な売り手市場である。シーズンシートがウェイティングリストだけで44,000人という数字は驚愕であった。チケット(メンバーシップ)のオンライン販売に力を入れ、顧客データベースを駆使し、来場者のアクセス(導線)は効率を求めており、実際にスタジアムでの観戦は快適であった。一方で、来場者を見渡すと明らかに富裕層が試合観戦に訪れていることを肌で感じ、スペイン(あるいは南米)と比較して、良いか悪いかは別にしてサッカー本来の「身の危険を感じるほどのスタジアムの爆発的な盛り上がり(換言すると混沌)」がないという点は、個人的には少し物足りなさを感じたのも事実だった。 サッカーがビッグビジネスとなり、クラブの収入を増加させる一方で、しっかりと地域に根ざしたクラブとしての社会的責任・役割をクラブ自身が認識して 28
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