イレブンミリオンプロジェクト欧州視察2008報告書
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Ⅲ-1.アーセナル Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) 献活動を2004年から政府(教育部門)が資金援助10万ポンド/年(2,200万円/年)を行うようになった。また、サッカースクール活動については、さらに別枠で7万5000ポンド/年(1,650万円/年)の資金援助があるとのこと。 現在、アーセナルはいわゆる“ビッグクラブ”であり、地域(Local)の定義は“全世界”である。従って、自クラブが展開するサッカースクールのほか、“アーセナル・サッカースクール”の名称でフランチャイズ的な展開で国内・海外でも多数展開しており、全世界へアーセナルブランドを浸透させることにつながっているが、これはアーセナルのタレント発掘のために行っているのではなく、地域・全世界でサッカーをする機会を提供するというクラブのスタンスである。 アーセナルほどの“ビッグクラブ”では、年間の試合数が多く、各国代表選手も多いが、選手たちはサッカースクールをはじめとした活動に積極的に協力しており、少なくとも1週間に1回はサッカー指導など、直接的・間接的に関わっており、こういったことは選手契約に含まれているとのこと。 また、非常に面白い取り組みとしては、“アーセナル・ダブルクラブ”という活動を学校で展開している。これは学校の勉強をちゃんと行えば、放課後のアーセナル・サッカースクールに参加できるというものである。その活動の中では、例えば、英語(リーディング)の授業ではマッチデープログラムを使ったり、数学の授業では選手の背番号のカードを使うなど、教材はすべてアーセナルに関係するものとなっている。外国語(スペイン語、ドイツ語、フランス語)の授業では、例えばアーセナル所属のスペイン人選手を使ったリスニング教材(DVD)を作って使用するなど、少しでもクラブへの興味・関心が高まるように仕掛けている。 3.アカデミー(下部組織の選手育成)について リアム・ブレディ氏(元アーセナルほかヨーロッパで活躍した有名な選手)がアーセナルアカデミーの責任者である。 下部組織の年間予算は270万ポンド~300万ポンド(5億9,400万円~6億6,000万円:人件費・施設費すべて含む)であり、“理想的な状態”を維持するためには上記の金額が経験的に必要とのことだった。この予算はクラブの収支に影響を受けず、必要であれば予算を増やすことも可能である。この予算を多いと見るか、少ないと見るかであるが、アーセナルのトップチームに昇格することができなかった選手を他チームに売却した額は、統計的に過去10年間で4,000万ポンド(88億円)にのぼる。また、直近のトップチームの試合に出場したアカデミー出身の4選手の評価額の合計は70億円にものぼる。上記の点を考えると、下部組織を充実さ 25

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