Ⅱ-3.アスレティック・ビルバオ Jリーグ イレブンミリオンプロジェクト 欧州視察報告(2008年1月実施) をしている。 そして、ここで大きな特徴がある。 小さい地域で優秀な選手を一箇所に集めてしまうと、アスレティック・ビルバオの一人勝ちになってしまう。そうなると他チームのレベルが上がりにくいし、アスレティック・ビルバオ自身も毎回10-0になるような試合をしていては強化にはならない。つまり、一人勝ちは最終的にアスレティック・ビルバオのレベルも下げることになる。 それを防ぐために、考え出された方法が「1歳年上と戦う」という方法だ。ご存知の通り、スペインでも育成年代からリーグ戦システムが発達している。アスレティック・ビルバオは、全て1歳年上と対戦するようにしたのだ。例えば11歳カテゴリーのリーグでは、アスレティック・ビルバオだけ10歳の選手で構成されたチームで戦う。1歳という年齢差は、子供にとって大きなものだ。 それに相手は「アスレティック・ビルバオに勝ちたい」とガチガチに守ったり、体力差を活かしたサッカーをするので、苦戦を強いられることになる。その中で、さらに切磋琢磨させ、良い選手を育てていこうとしているのだ。 よって、前出のカテゴリーの分類を見ていただきたいのだが、高校三年生は、Juvenil Aという通常高校生が戦うカテゴリーではなく、バスコニア、もしくはビルバオ・アスレチックの選手として戦う。 つまり高校三年生の選手が、スペインリーグ、3部や4部で大人と共に戦う。こうして鍛えられた選手がすぐにトップチームに引き抜かれるのだ。 高校レベルからいきなりプロに行くのではなく、その前に3部や4部で鍛え、トップチームのプレッシャーにも耐えられるようにしている。 (3)下部組織の理論 アスレティック・ビルバオ下部組織の責任者は、こういっていた。 「レアル・マドリードやバルセロナは世界中の海で釣りができる。釣った魚が良い魚でなければ、その魚を捨てて、別の魚を釣る。しかし、我々は違う。我々が釣れる範囲は小さな湖のみだ。よって、釣ってきた魚がさらに良い魚になるように丁寧に育てないといけないのだ」と。 さらに選手に直接指導を行う指導者全員、スペイン上級ライセンスを持っている。日本のクラブで下部組織のコーチも全員S級を持っているようなものだ。 育成理念はとにかく「選手第一主義」で、「計画+練習+競争(リーグ戦)=結果」であるとされ、さらに育成年代にて、もっとも大切なのは、試合の結果ではなく成果であるとされている。 「結果=成果(パフォーマンス)」と考えられがちだが、そうではない。これは、非常に的を射ている表現だ。 我々はついつい目に見える(数字という)結果に左右されがちだが、勝ったからといって、全てのチーム目標が達成されたとは限らないし、負けたからといって全てが駄目なのかというとそうではない。「時に、結果は我々の目を騙すのだ」と下部組織責任者は語っていた。 それから、この理論は指導者にも適応される。指導者がもっとも近くで選手に接し、影響を与えるからだ。例えば、週末の試合で、対戦相手に足の速い選手がいたとしよう。通常であれば、その選手を警戒するように、そして、その選手にやられないように週の練習の中で対策を立てる。それで試合に勝てるかもしれないが、選手の将来を考えると何の意味も無いことはお分かり頂けるだろう。 よって、アスレティック・ビルバオでは、選手がグラウンドで判断するようにし、指導者は、その日限りの対応を求めてはいけない。彼らが目指すのはアスレティック・ビルバオのトップチームの選手であり、目の前の試合に上手く勝つことではないのだ。指導者は週ごとの対策を立てないし、ポジションも極力21
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