Jリーグ欧州スタジアム視察2017
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Ⅶ.参加者所感 Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 99 ボックスの契約件数向上につながる可能性を示唆するものであると感じた。 ■多目的利用促進機能のインセンティブ設計事例:ヘルレドーム(アーネム) ヘルレドームは、EURO2000の開催に合わせて建設されたスタジアムであるが、当初から大会後は多目的スタジアムとして利用することを前提に設計されており、世界で初めて可動式の屋根とピッチを導入した。こうしたハード面での好条件が米国資本のイベントプロモーターの目に留まり、2012年からMojo Concerts(世界的なコンサートプロモーターLive Nationの子会社)が運営権を取得し、世界的なアーティストを誘致するベニューとなった。ただしホームチームにとっては、あくまで一利用者という立場であり歯がゆい状況となっている。フィテッセは125周年を迎えた歴史的クラブなのだが、ミュージアムさえない。 ■複合機能のインセンティブ設計事例:シティ・アレナ(トルナバ) シティ・アレナでは、3.5haに及ぶ不動産価値の高い公有地をディベロッパーに€1で売却し、その見返りに老朽化したスタジアムをショッピングモール併設の複合施設に全面的に改築してもらうという交換で成立していた。つまり、好立地にある土地の低価格売却が開発業者の呼び水となり、行政は最小限の公共投資で複合的な機能が組み合わさった市民の交流施設の整備を実現したといえる。 今後の日本のスタジアム建設は、プロフィットセンター化に転換するという政府からの期待もあり、以前にも増して事業性が問われてくるものと思われる。スタジアム建設構想の初期段階から、さまざまなステークホルダーの参画を促し合意形成を図るとともに、市民やファンを含めた民間アクターが資金、知恵、アイデアを投じる動機付けを促す枠組みを、スタジアム構想ごとに検討していくことが極めて重要だと感じた次第である。 今回の視察後、Jリーグ以外の全参加者の皆さまから所感をお寄せいただきましたが、誌面の都合上、代表して 4人を掲載させていただきました。皆さまのご協力に感謝し、今後の活動に生かしていく所存です。 エスプリ・アレナ社会ニーズ(イベント開催等)チームニーズ(老朽化、設備投資他)民間所有公共所有公共運営(3セクを含む)スタッド・マトミュット・アトランティックコンチネンタル・アレナヘルレドームアリアンツ・アレナシティ・アレナグルパマ・アレナアリアンツ・シュタディオンボルシア・パルク、アウディ・シュポルトパルク民間運営視察スタジアムの類型化

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