Ⅶ.参加者所感 Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 96 今回の視察から、欧州の潮流を経験として直接蓄積できたことは大きく、ニーズに沿った助成金となるような制度設計を常に意識することが重要であると感じた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 茨城県 企画部 事業推進課 副参事 鷹羽 伸一 今回の視察を通じて、欧州のスタジアムの特徴であり、日本においても参考にすべきと感じた点については、以下のとおりである。 1.スカイボックス・ビジネスシートの整備と安定的な年間収入 ほとんどのスタジアムが、企業等が年間を通じて契約するスカイボックスを数多く備えるとともに、数百~千席以上にも及ぶ広いラウンジレストランを有し、そこで食事等のサービスが受けられるビジネスシートを設けている。 スカイボックスの料金は、アリアンツ・アレナのような人気スタジアムでは、1部屋年間約€10~30万(1,343~4,030万円)にも及び、安定的な年間収入をもたらすとともに、それらで得た収益を新たなスタジアムの整備に再投資するなど、好循環を生み出す源泉にもなっている。 企業慣習やサッカー文化が異なるとはいえ、試合単位のチケット収入への依存度が高い日本と違った安定した収入構造は、今後のわが国におけるスタジアム経営を考えるうえでも、大いに参考にすべきと感じた。 2.多目的利用を想定したスタジアム経営 (1) 大規模イベントへの活用 多くのスタジアムにおいて、大規模集客が可能な環境を生かし、コンサートやメッセ等のイベントを開催しており、収入につながっている。 ただし、ピッチ引き出し型の構造になっているヘルレドームのような例を除けば、イベント後の芝の張り替えが必要であり、短時間で張り替えを行う技術や張り替え費用の負担等が必要である。 これらの課題はあるものの、日本のサッカースタジアムにおいても、このような多目的利用を進めることは意義があるものと考える。 (2) ノンマッチデーにおけるビジネスユース ほとんどのスタジアムにおいて、日常的に、スカイボックスやラウンジを、セミナーや展示会等の用途に貸し出し、収入につなげており、日本においても、これらのビジネスユースの促進を図っていく必要があると感じた。 (3)サッカー試合におけるサポーター席の可変 本来シート席であるサポーター席を、国内リーグ時には立見席とする等、収益性を考え、柔軟な座席配置としているところも参考になった。
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