Ⅴ-1.アーネム Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 84 (9)最新のトレーニングセンター フィテッセでは、ユースチームの充実化に力を入れており、5年前にスタジアムから約15km離れた場所にトレーニングセンターを建設した。これはオランダで最新の施設である。トレーニングセンターには選手・コーチ・スタッフが全て集結しており、特に強化部と事業部が同じ建物にいることが重要である。 (10)所感 このスタジアムが完成したのは1998年と、今回視察したスタジアムの中では最も古いものであるが、開閉式屋根、引き出し可能なピッチ、ゼロタッチなど、非常に野心的な試みを行っていると感じた。ただし、「興行活用」に軸足を置いているため、フィテッセの要望がスタジアムにあまり反映されておらず、サッカースタジアムとしての使い勝手は最上級のものではないが、「多目的」という観点に軸足を置けば、今後の日本におけるスタジアム像に多くの示唆を与えるスタジアムであるといえる。 また、運営会社の特性(全世界的なプロモーター)を生かし、大小さまざまなライブやイベントを誘致できていることは、「稼ぐスポーツ」の実現にあたり非常に参考となる点である。日本、特に地方におけるスタジアムの実現にあたっては、その稼働率の向上、「いかにしてマネタイズしていくか」という観点が重要であり、スタジアム活用の方向性に合致した株主や協力会社との連携が活用用途の幅を広げる1つの策であることを再認識できた。また、今後、フィテッセによる友好的な買収も検討しているということであるが、上記の点より、現在のヘルレドームの強みが失われるリスクも少なくないと感じる。 また、スタジアムビジネスについては、高い演出性やケータリングの選択性など、細やかな配慮がされており、ビジネスでは使いやすい仕様となっている。今後、日本でも多目的スタジアムの要望は増えてくると思うので、ヘルレドームの視察で得られた知見を、計画に生かしていきたい。 最新のトレーニングセンター 設計者による外観スケッチ クラブGMのヨーストビッチ氏
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