Jリーグ欧州スタジアム視察2017
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Ⅳ-2.レーゲンスブルク Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 42 RBB社ではコンチネンタル・アレナを単なるサッカースタジアムとは捉えておらず、プライベートパーティーやビジネスイベント、会議、セミナーの場所であるとしている。 (7) ホームクラブの位置付け コンチネンタル・アレナの所有者はレーゲンスブルク市で、運営者は市100%出資のRBB社であることから本スタジアムの事業スキームは公設公営ということになる。 その中で、ホームクラブであるヤーン・レーゲンスブルクはコンチネンタル・アレナの利用者という位置付けになっている。 本スタジアム建設時において、レーゲンスブルク市はヤーン・レーゲンスブルクにスタジアムへの要望を確認したものの、あくまでも意見という扱いであり、必ず要望を取り入れるというものではなかったようである。 スタジアムの整備運営の主体はあくまでレーゲンスブルク市であることから、ヤーン・レーゲンスブルクが本スタジアムでの試合開催時に得られる収入は、チケット収入とクラブ自身でスタジアム内に設置したサイネージ広告の収入等にとどまっているようであった。 3. 所感 コンチネンタル・アレナを訪問して得られた知見は、スタジアムを整備運営する意義、そして事業スキーム、スタジアム経営におけるホームクラブの位置付けという点である。 日本では、スタジアムを整備運営するに際して民間活用による収支改善努力の観点が重視される。一方で、スタジアムの運営収支はそのほとんどが赤字であることから、運営収支で建設費の投資回収を賄うことはできない。これらの点を勘案して、建設は公共、運営は民間という公設民営スキームが主流となっている。 また、ホームクラブの要望をどうスタジアム整備運営に生かすか、といったホームクラブへの配慮の扱いについても、日本各地のスタジアム整備構想における検討委員会等で議論がなされている。 ひるがえってコンチネンタル・アレナにおいては、スタジアムをサッカー単独のためのものだとは捉えず、会議やパーティーなどのビジネスや交流の拠点の場であると認識していた。 レーゲンスブルク市にとり、スタジアムの運営収支が赤字であるものの、ビジネスや交流の拠点になるという波及効果があるのであれば、(一定の収支改善努力はもちろん必要であるだろうが)日本のように民間活用で運営収支を改善しようという所作ではなく、市が公設公営で整備運営するものだという公共の基礎インフラ、赤字云々ではないという考え方に立っているのだろうと見て取れた。この、「スタジアムは公共財」的な考え方は日本にも参考になるのではないかと思う。 さらに公設公営で整備運営されているスタジアムにおいては、整備資金を拠出していないホームクラブがホームスタジアム経営に口を出せる権限は持たず、あくまでも利用者としてのポジションであり、スタジアムでの試合時からの売上をクラブが増やしたいのならば、クラブ自身でスタジアムに設備を設置する分についてのみクラブの収入になるというシンプルな事業スキームを知ることができた。 レジャープール施設のウェストバッド 試合 選手の背番号と名前をプリントした椅子がある 出典:Westbad HP

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