Jリーグ欧州スタジアム視察2017
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Ⅲ-1.トルナバ Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 26 2. 駅に近いまちなか複合型スタジアム (1)スタジアム概要 シティ・アレナは、スパルタク・トルナバの本拠地であり、2015年8月に竣工した中央ヨーロッパにおける最新のスタジアムである。トルナバの中心市街地における、スタジアムとショッピングモールの複合開発という特徴を持った官民のフラッグシップ事業であり、2015年のスロバキア建築大賞に選ばれた。 1921年に建設され、改修を繰り返してきたシュタディオン・アントナ・マラチンスケーホの老朽化に伴い、新しいホームスタジアムの建設をという声が持ち上がり、2000年代後半から市、スパルタク・トルナバ、および民間事業者による検討が始まった。当初はスイス法人が主体となって、スタッド・ド・スイス(ベルン市)を模倣した複合型スタジアムを新設する計画が進行していたが、合意には至らず交渉は決裂した。その後、ホームクラブのオーナーであるウラジミール・ポール氏を中心に、国内で数多くのショッピングモールを展開している大手ディベロッパーEuro Max Slovakia社(同氏がオーナー)による同敷地での複合開発計画が動き出すこととなった。建設工事は2013年9月に始まり、2015年8月22日に同じクラブカラー(赤、黒、白)を持つブラジル1部リーグのクラブ、アトレチコ・パラナエンセとの親善試合でこけら落としを迎えた。スパルタク・トルナバのホームゲームに加えて、スロバキア代表戦も開催している(2016年には5試合を開催)。 スタジアムは城壁に囲まれたトルナバの歴史的中心部のすぐ外に位置し、アクセスはトルナバ駅から約700mの好立地である。クラブのホームゲームでは観戦者の約8割は徒歩で来場するという。 プロジェクト全体の建設費は€7,800万(88億5,846万円)であり、うちスタジアムの建設費が€3,000万(34億710万円)を占める。スタジアムに対しては、市がスロバキアサッカー協会を通じて€1,200万(13億6,284万円)の補助金を交付した。その他は、オーナーの自己資金と銀行からの借入金で調達した。€600万(6億8,142万円)の不動産価値を有する3.5haに及ぶ公有地をディベロッパーに€1(114円)で売却し、その見返りとして新しい複合型スタジアムに改築をしてもらうスキームである。公共性の高いスタジアム部分のみ、建設後に所有を市に移転し、City Arena社(ディベロッパーの100%子会社)が30年間の賃貸借契約を結び運営を行っている。ショッピングモールは土地・建物ともに別事業会社City Arena Plus社の所有となっている。設計会社はAdamec & Adamec社、建設会社はStrabag社であった。(※€1= 113.57円) 座席数は、19,200席で、うち1,418席がVIPシート、300席がスカイボックスシートである。座席はクラブのカラーで統一されている。スタンドは全席鉄骨製の屋根で覆われている。旧スタジアムの1層構造のメインスタンド(西側)は、近隣住民への配慮か複合型スタジアム シティ・アレナ 出典:Air view スタジアムは歴史的中心部の傍らに位置する 出典:City Arena Trnava Fansite スタジアム

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