Jリーグ欧州スタジアム視察2017
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Ⅰ-1.ウィーン Jリーグ欧州スタジアム視察2017 報告書 (2017年10月28日~11月5日) 11 ビジネスラウンジが吹き抜けで空間的につながり、食事を楽しみながら観戦できるようになっている。ビジネスエリアへは大きなクラブ名の書かれた円形の外観が特徴的な専用の出入口があり、明確な動線・セキュリティ区画が形成されている。 また、ファンショップに隣接して、クラブミュージアムが併設されており、チケットがあれば行き来ができる動線となっている。価格は大人が€7 (940円)、子どもが€3 (403円)である。ミュージアムではクラブの歴史を中心に、昔のスタジアムの模型、スタジアムで使われていたサインの再利用などが行われている。 スタジアムの外観は、クラブカラーである緑を基調とし、内装ではポイントカラーとして緑を取り入れている。 また、熱狂的なサポーターであるウルトラスが陣取るホーム側のサイドスタンドには、設立当初のクラブカラーを残し、またスタジアム外には昔のスタジアムの照明塔をそのまま残しており(現在は使用不可)、クラブの歴史継承を重要視した計画となっている。 ③建設手法 スタジアム建設の企画段階では、スポーツ研究所で既に30のスタジアムの実績を持つIFS (Institute for sports facilities consulting)をコンサルタントとして採用し、建設条件を整理した。また、企画にあたっては規模や仕様などが近いマインツ(独ブンデスリーガ)のスタジアム「コファス・アレナ」を参考にした。 建設の入札にあたってはTU competitionという建築家と建設会社が一つのコンソーシアムを組んだトータル企業で応募する形式を採用し、STRABAGという企業を選定した。トータル企業とすることで、設計前にコストの合意が可能となり、更に建築家のアイデアが本当に実現できるのか設計段階で判断できることが大きなメリットであった。例えば、トータル企業からスタンドを一層にすることでコストを下げ、かつ臨場感を生み出すアイデアの提案があった。 なお、企画・設計に18カ月、解体・建設に17カ月、計35カ月の短期間でスタジアムを完成できたのは、スタジアム所有者であるクラブのオーナーがプロジェクトへ積極的に参加したことで意思決定がスムーズとなり、予算内でかつスケジュール通りにプロジェクトが進んだことが大きな要因であった。オープニングゲームは2016年7月16日、チェルシー(英プレミアリーグ)との親善試合でラピッド・ウィーンが2-0で勝利した。 スタジアム内のミュージアム スタジアムの模型。昔の照明灯が今も残されている クラブカラーを基調としたスタンド

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