93Jリーグチェアマン村井満2016シーズンを振り返って術の活用」「国際戦略」を切り口にして、半年に一度のペースでJリーグの現在地を確かめてきました。 しかし、これらの中には、短期的に成果が出やすいものとそうでないものが混在していることを忘れてはいけません。例えば、「デジタル」のように半年で市場が変化してしまうような分野では、スピーディーにトライ&エラーを積み重ねることが求められますが、「国際戦略」や「スタジアム」のように、組織内でのコミュニケーションにとどまらず、数多くのステークホルダーとの協議が必要な分野もあれば、選手や経営人材の育成のように短い期間で結果が出にくい分野もあります。これらの分野に関しては、目先の結果にこだわるのではなく、将来十分な成果を出すために今すべきことをしっかりやれているか?という視点を大事にしていく必要があります。すぐに成果の出にくい「種まき」の部分のひとつ「選手育成」に関してですが、2015年に組織された選抜チーム「Jリーグ・アンダー22選抜」が明治安田生命J3リーグに参加、16年からはメニューを増やし、より一貫した若手育成という視点からチーム単独でU-23チームを参戦させ、さらにサテライトリーグを復活しています。さらに、来シーズンからはJリーグYBCルヴァンカップに1人以上の21歳以下の若手選手の試合登録・出場を義務付ける「指定選手枠」を導入することも決定しました。「魅力的なフットボール」に関しても、定義の明確化やプレーの数値化、可視化はかなり進んだと思っています。ただし、シュート数やパススピード、スプリント回数やアクチュアルプレーイングタイムのような数字データを主体にした分析だけでは限界もあり、プレーの本質的なアグレッシブさや選手個々の判断力や人間力の向上などは継続した課題と位置づけていきます。「スタジアム」もホームタウン各地で建設の機運の高まりが見られますが、「経営人材の育成」と共に最も成果が出にくい分野でもあり、これからも地道に活動を続けていきます。私がチェアマンに就任した当初、現在地の表記のない地図を眺めているような心境になったことがありました。Jリーグの理念である「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」、「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」、「国際社会における交流及び親善への貢献」という向かうべき目的地はあっても、自分たちが今いる立ち位置が不明確だったりする。そのため、目的地までどのくらい距離があって、どのくらいのスピードが必要なのかも知る由がないという状態にあったように思います。しかし、昨年から発行を始めたこのJ.LEAGUE PUB Reportにより、現在地と目的地までの距離がおぼろげながらもつかめてきた気がします。 本書では、Jリーグの成長プランである「2つの前提と5つの重要戦略」に則し、「財政基盤の強化」と「選手育成の強化」そして、「魅力的なフットボール」「スタジアム」「経営人材の育成」「デジタル技
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