2016 winter
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89中西大介Jリーグ常務理事「サッカー」という物語を紡ぐためにファン・サポーターのみなさまにいかに自分たちの物語を語ってもらうか、なのだと思います。 その状況の中で、世界の主要サッカーリーグとして初めて、インターネットサービスの事業者であるDAZNと放映権契約を締結できたことは、まさに幸運でした。今、世界中で映画やドラマなどのコンテンツを中心にインターネット配信が行われていますが、この契約によりサッカーもそれらに並ぶ「物語」として存在できるようになるのです。プロサッカー界に先駆けてインターネット配信分野に踏み込むことになるJリーグは、世界のサッカー市場における実験場のような存在になるでしょう。 この10年にわたる長期の契約により、Jリーグはリーグ経営の選択肢を大きく拡大することもできました。そして、それは同時に物語を語るための手段の選択肢も、同じように拡大したことを意味します。私は今こそJリーグの理念に立ち返り、そこから生まれる物語を、先端技術も含めたより豊富な手段で、より多くの人に伝えていければと思います。先日「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」という映画を見に行きました。この映画は、作家のトマス・ウルフと編集者のマックス・パーキンズのコンビが共に作品を世に送り出していく、という実話に基づいた話なのですが、この劇中でパーキンズが「物語」について語るシーンがあります。まだ人類が暗闇を恐れていた時代、闇夜の中で長老が焚き火をして物語を語った。人々はそれによって暗闇の恐怖に打ち勝ってきたんだ、と。 今日、夜の闇に恐怖することはもうほとんどないでしょう。それにもかかわらず、今でも人々が物語を必要とするのは、私たちが変わらず闇のような不安に囲まれているからではないでしょうか。その意味で私は、サッカーを現代の闇に打ち勝つための物語を紡ぐことのできる「物語産業」だと捉えています。 そして、デジタル技術の普及により誰もが自由に情報発信できるようになった今、物語は一方的に語られるだけのものではなくなりました。「物語産業」であるJリーグが考えるべきは、いかに大きな声で物語を語るかではなく、

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