2016 winter
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79から、一般的な企業価値評価の枠組みの中で定量化することが難しい。例えば、企業の採用活動においては、所有者や出資者が全国展開型企業と地域密着型の地場企業とで大きく効果が違ってくる。つまり、Jクラブは地域密着を基本理念とするため、全国展開型企業よりも地域密着型の地場企業の方が高い価値をクラブに見だすことが可能となるといった具合だ。そのため、クラブの価値は、一定の公式に当てはめることで評価できるものではなく、各クラブが保有する「見えない価値」を一つずつひもときながら評価することが必要であろう。スポーツが健康、観光などと融合し、新たな経済価値を生み出す潜在能力があるとすると、さまざまな分野においてどのくらいの経済価値を生み出すかを検討することで「見えない価値」を可視化できるかもしれない。また、「見えない価値」を日常的に可視化することを意識し、その価値を分かりやすく所有者や出資者に説明していくことも重要となっている。スポーツには、健康、観光、ファッション、テクノロジーなどのさまざまな分野と融合することで、新たな経済価値を生み出し、日本社会を再び活性化させる一助となるだけの潜在能力がある。今、政府やスポーツ庁がスポーツの市場規模を2025年までにさらに約10兆円増加させることを目標としている中で、スポーツコンテンツホルダーの動向には多くの視線が注がれている。Jリーグにおいては、新しい放映権契約の締結がスポーツ市場拡大に寄与した結果となったが、今問われているのは、それだけの価値がリーグにおいても、クラブおいても本当にあるのかということであり、これからそれを証明していかなければならないものの、それだけでは十分ではなく、各クラブが保有する無形資産を含めた「見えない価値」も併せて訴求していくことが重要となってくる。それでは、そもそもJクラブの価値はどのように評価されるのだろうか。Jクラブを含む、スポーツクラブの価値は、「地域貢献」や「クラブを通じた地域・ファンとの一体感」などの金額換算することができない要素が多分に含まれていることや、所有者や出資者の業種業態、戦略ごとに享受する価値が異なることクラブ価値向上に資する評価軸の構築を

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