2016 winter
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45本リポート夏号で実施したUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)決勝と明治安田生命J1リーグのプレーデータの比較ではシンプルな差は分かるが、大事なのは見ている方々に魅力的に映るかどうかで、ここは数字上のデータでは語り切れない部分。そこで今回は、世界と日本の試合の映像を見比べて違いがあるのかを調べてみた。比較したのはUCLとJリーグYBCルヴァンカップ決勝。いずれもタイトルの懸った高い緊張感のもと、延長戦を含めた計120分間、PK戦までもつれる激闘となった試合である。同条件で世界とJリーグの試合を見比べたところ、興味深い違いが見られた。ルヴァンカップの決勝も緊張感がある好ゲームだったが、UCLでは1人がボールを持つと、周りの反応が非常に速い。ボール保持者の周りだけではなく全体がスピードアップしていくので、迫力がある。ボールを持たない選手も一斉に駆け上がっていくシーンが多く、ゴール前では激しい攻防が目立った。また1人でも果敢にゴールを狙っていく。とはいえ、よく見るとゆったりボールを運ぶ時間もしっかりつくっている。ここでも、ゆったり回すときは全員がそのリズムに乗っている。世界のトップレベ原博実コメントJリーグ副理事長ルの試合では「勝負どころ」を選手が理解しているということだろう。またUCLでは、総じて「そうそう!」「そこそこ!」と思えるシーンが多い。相手ゴールを脅かし、観客をうならすスリリングなラストパス(「Woo(ウ~)パス」と呼ぶことにした)が両試合で何本あったかを数えたところ、ルヴァンカップが29本に対してUCLは38本。前半だけでも10本の差があった。なぜUCLにおいてWooパスが多いのかを考えると、攻撃側は常に相手の嫌がるところをシンプルに狙っているからだ。この数字は戦い方によって変わるが、観客は、やっぱりこうしたスリリングなシーンを何度も見たいはずだ。 プレーデータを見ると、UCLに見られるスピーディーな攻守の展開を支えている要素の一つに「パススピード」が挙げられる。プレッシャーが速い相手をかわすために、自然とパススピードも上がる。Jリーグでは、プレッシャーが緩く、相手の出方を待っているシーンがまだまだ多いように見受けられる。そのような状況では、必要以上に速いスピードでパスを出す必要はなく、結果的にJリーグの方が、パススピードが遅くなっているという見方もできる。新シーズンからJリーグが自ら行う中継制作においても、より魅力的に見ていただくために最新カメラを導入するなどさまざまな工夫を凝らしているところだが、肝心なのは試合の質である。タイトルを懸けた大一番のみならず、普段のリーグ戦からファン・サポーターを魅了するプレーを増やしていかなければならない。(前半20・後半18)(前半10・後半19)Jリーグ:UCL:3829Woo PassWoo Passとは:相手ゴールを脅かすチャンスパス

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