006359Jリーグにおける財政基盤の強化とはJリーグが掲げる5つの重要戦略を下支えする2つの前提のひとつが財政基盤の強化だ。デジタル分野、育成分野などに代表される未来への投資を続け、世界とのギャップを埋めていくためには、土台となる財政基盤の強化が重要な課題となる。Jリーグでは現在、クラブライセンス制度の導入により各クラブの経営安定化を図ると共に、リーグ全体としてもタイトルパートナー契約や新しい放映権契約により財政基盤のスケールアップを実現している。ドイツサッカー連盟が、クラブのリーグ戦への参加資格を審査するための制度として導入したことがはじまりといわれる、クラブライセンス制度。UEFAチャンピオンズリーグが、同様の制度導入により大会価値の向上に成功したことから世界的な導入が進み、アジアサッカー連盟(AFC)でも2013シーズンから、AFCアジアチャンピオンズリーグの参加資格を審査する基準として本制度の導入を決定した。これを受けて、JリーグもAFCが各国に提示している制度概要に独自の基準を加えた「Jリーグクラブライセンス制度」を2012年から導入し、今年で施行5年の節目を迎えている。 本制度の導入により、「サッカーの競技水準や施設水準の持続的な向上」、「クラブの経営安定化、財務能力・信頼性の向上」を目指しているJリーグは、2016シーズンのJ1全18クラブを含む計40クラブにJ1所属に必要なJ1クラブライセンスを交付。クラブの所属リーグに関わらず、競技水準、施設水準の向上を呼びかけている。また、本年度の判定においては経営面で是正通達が必要とされるクラブが、制度導入後初めてゼロとなった。クラブライセンス制度の導入前には、黒字経営が目的化することで人件費の削減などが起こるのではないかと一部の懸念の声もあったが、クラブの財務規模は拡大均衡で推移しており、クラブの経営安定化という目標も現時点では達成されていると言えよう。 一方で、健全経営を志向するJリーグのクラブライセンス制度が、クラブの投資マインドに影響を与えているとする声も中にはある。5つ基準からクラブ経営の水準維持向上を掲げるクラブライセンス制度そのものの撤廃は考えられないが、5年の節目を迎え、クラブの経営も安定してきた今、制度の一部見直しも視野に入りつつある。クラブライセンス制度の歴史、目的、成果3期連続赤字クラブ数(J1・J2)2012年度2016年度2012年度2016年度債務超過クラブ数(J1・J2)4040
元のページ ../index.html#37